【武蔵小杉 人×街インタビュー編】新旧住民、さまざまな思いのまとめ役 「NPO法人 小杉駅周辺エリアマネジメント」

2017.11.27

新旧住民、さまざまな思いのまとめ役

 2004年に再開発が始まった武蔵小杉駅南口は、もともと工場やグラウンド跡地で居住者はほとんどいなかった。ただ、埋立地につくられた豊洲などとは違い、周辺には昔からの商店街、町内会(町会)がある。新しくできるタワーマンションは9棟5000 戸。一町会で受け入れられる大きさではない。そこで川崎市主導でつくられたのがNPO 法人小杉駅周辺エリアマネジメント(通称エリマネ)だ。9棟の住民で構成される「会員マンション」と周辺町会、商店街・商業施設、行政・公共機関の橋渡し、ハブになるのがエリマネで、NPO による街づくりは国内初の試み。理事長を務める安藤均さんに、エリマネの役割が最もよく現れている地域イベント「コスギフェスタ」の企画・運営を中心に、その活動と武蔵小杉の今を語ってもらった。

―― 安藤さんがエリマネの理事長になられたのは?

 2013年からです。エリマネは2007年の設立ですが、私で理事長は3人目です。初代理事長は中原区町連会長の吉房正三さん、二代目が商店街会長の松本等さんと地元の顔役でした。私の時はすでにタワーマンションが建った後で、今は、エリマネの活動も行政主導から完全に住民主体の活動に移っています。

―― NPO といっても、活動のためには資金も必要だと思いますが。

 会員マンションからの会費、1戸あたり月300円× 5000戸が我々の主な収入です。マンションができる前に川崎市主導でつくられたから可能だった仕組みで、マンションができてからでは難しかったと思います。6人の事務局員には給料が出ていますが、私も含め30人の理事全員はボランティアです。

コスギフェスタのコンセプトは「子供と地元」

―― エリマネは具体的にはどのような活動をしているのでしょうか。

 まず、2011年から毎年10月に開催しているコスギフェスタの企画運営があります。今年で7回目になるハロウィンのイベントです。1回目はマンション全部が完成していなかったので、参加者は数百人。子供たちが仮装して、各マンションのラリーポイントを回って、カードにスタンプを押してもらい、お菓子をもらう「トリック・オア・トリートスタンプラリー」が最初でした。今でもメインのイベントですが、それに地元の商店街や企業も加わり、2016年は10月21日の前夜祭を含め22、23日の3日間で10万人が参加するイベントにまで成長しています。

―― マンション以外からの参加者も増えている?

 最近は、半分以上がそうです。ただ、コスギフェスタのコンセプトは、一貫して「子供と地元」です。渋谷や六本木のハロウィンは若者が奇抜なファッションを競うイベントになっていますが、コスギフェスタはあくまで子供たちが主役で、大人もいっしょに盛り上がろうというイベントです。同時に、コスギフェスタは地域の学校や地元のダンス教室をはじめ、日頃さまざまな活動を行っている人たちのお披露目の場にもなっています。
 コスギフェスタには年々新しい企画も加わっていて、2015年から始まった「武蔵小杉カレーフェスティバル」もその一つです。武蔵小杉と隣の新丸子はおいしいカレー屋さんが多いことで知られていますが、それをさらに広めようということで、コスギフェスタ前後2週間にわたってカレー店をめぐるスタンプラリーと、コスギフェスタ前夜祭の会場にカレー店を集めて行われる「武蔵小杉カレーEXPO」の2つで構成されています。
各マンションのラリーポイントを回ってお菓子をもらう「トリック・オア・トリートスタンプラリー」は第1回から行われているコスギフェスタのメインイベント

各マンションのラリーポイントを回ってお菓子をもらう「トリック・オア・トリートスタンプラリー」は第1回から行われているコスギフェスタのメインイベント

―― そういう新しいイベントは、どうやって考えるのでしょうか。

 コスギフェスタに限りませんが、基本は隔月で開催される理事会と、月1回行われる理事で構成される各ワーキンググループの話し合いです。新しい企画やアイデアについては、地元住民や地元住民でなくても武蔵小杉を盛り上げたいという人からの提案も自由に受け付けています。
 例えば、2016年から始めた新企画に地域運動会「コスギんピック」があります。要は、歩行者天国で行う綱引きと玉入れですが、商店街、町会、マンション、消防団、プロバスケットチームの川崎ブレイブサンダーズが参加してかなり盛り上がりました。この企画を提案してきたのは慶應大学の学生です。それから、先ほどの「武蔵小杉カレーフェスティバル」を企画したのは、地元のコスギカレーの奥村佑子さんです。彼女はものすごく積極的な人で、パワーポイントで企画を説明しながら「ほかのカレー屋さんにも私が話をつけますから、ぜひやらせてください」。それに対してこちらが言ったのは、「ぜひ理事もやっていただけますか?」。結局、彼女は理事になって、今、一生懸命やっています。

―― エリマネに持ち込まれたコスギフェスタの企画は、どういうプロ セスで決定されるのですか。

 コスギフェスタワーキンググループの打ち合わせが、1年前から月1回あります。新しい企画を検討するのは前半の半年ですが、アイデアのある人にはその打ち合わせに来てプレゼンしてもらいます。実際は、コアスタッフ何人かで事前に概略を聞き、これはおもしろいという企画をワーキンググループの会議でプレゼンしてもらっています。

―― コスギフェスタも規模が大きくなり、費用もかかると思うのですが。

 できるだけお祭り、イベントごとに独立採算で行うことを基本にしています。コスギフェスタには総額約1300万円かかっています。この内450万円は国、県、川崎市からの補助金です。実はコスギフェスタは、2015年から武蔵小杉駅前通り商店街との共同開催にしています。450万円というのは、国、県、川崎市から商店街に入ってきた商店街活性化のための補助金です。この補助金を獲得するため、エリマネが商店街の代表と一緒に国、県、川崎市それぞれのプレゼンに協力しています。
 それから、企業の協賛や公式パンフレット掲載の広告もすべて自分たちで交渉します。企業には、お金だけではなく、たとえば警備や設営・撤収も手伝ってもらうお願いもします。企業名の入ったユニフォームで警備や設営・撤収を手伝ってもらっても、もちろんOK です。地域に貢献するCSR 意識の高い企業というPR にもなるわけです。そういうWIN・WINの関係で、企業協賛・協力を募っています。

―― 公式パンフレットの広告というのは?

 コスギフェスタ公式パンフレットは10月の発行で、2万部印刷しています。通常の雑誌と同じように裏表紙や中面に広告ページを設けています。管理会社を通して会員マンション全戸と、中原区の後援をいただいているので上丸子、西丸子、下沼部、東住吉、今井の全小学校の児童にも配られます。ですから、その父母にも届くということです。これとは別に3月に「こすぎの風」というエリマネの事業報告書を兼ねた機関誌を6000部発行し、これも会員マンション全戸に配っています。

新旧住民をエリマネがつなぐ

―― 30人のエリマネの理事は、どういう方たちなのでしょうか。

 マンション住民、地元住民ほぼ半々ですが、ホームページを見て活動に共感し理事になってもらった地元以外の人もいます。私は地元出身で、エリマネに入ってからマンションの人たちとつき合うようになりました。

―― 安藤さんは地元の安藤家の20代目当主だと伺っていますが。

 家は小杉陣屋町ですが、江戸時代に周辺の名主を統括する割元名主を務めていました。安藤家の本家ということで小杉神社と西明寺の総代も務めています。武蔵小杉というのは、そういう昔のしきたりが残っている土地なんですね。その一方で、タワーマンションが立ち並ぶ地区もある。エリマネができてから、新旧住民が交流している街としてメディアに取り上げられることが多くなりました。2015年から始めた「こすぎ夏祭り」もそうです。周辺の話を聞くと再開発で場所がなくなってしまったこともあり盆踊りをやっていない。それで、商店街、小杉二丁目・三丁目町会、エリマネの4団体が夏祭りをやろうということになったのです。幸い二丁目、三丁目の町会の中には踊りの先生がいる。盆踊りの練習を2回ほどやって、本番に臨みました。盆踊りのやぐらにパネルを取り付け広告スペースに、やぐら提灯には企業名を入れて、300個以上ご協力いただきました。ここでも、できるだけ独立採算を目指しました。もちろん、エリマネがやっていることはお祭りだけではありません。子育て世代のためにママ友をつくる場を提供する「パパママパークこすぎ」や「こすぎナイトキャンパス」という読書を通じたコミュニティ、それから防災、防犯、清掃活動などにも取り組んでいます。

―― エリマネの今後の課題は何でしょうか。

 これから小杉町1丁目に1500戸、小杉町2丁目に1200戸と、昔からの町会のある地域にタワーマンションが建っていくことです。エリマネの会員マンションになるかどうかは、住民主体と言っても、われわれだけでは決められない問題です。行政の積極的な関与が必要になってくると思います。
記事作成:2017 July

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