成熟時代で支持される社会貢献するマーケティング

2017.09.19

コーズブランド・ラボ代表兼プロデューサー 公立大学法人宮城大学講師 野村 尚克 氏

コーズブランド・ラボ代表兼プロデューサー 公立大学法人宮城大学講師 野村 尚克 氏

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修了。コーズ・リレイテッド・マーケティング、ソーシャルビジネス、CSRを専門とし、いくつもの企業とNPOとの協働を手掛けている。東日本大震災以降は東北復興支援協働ネットワークを立ち上げ、被災地にて支援活動、NPO・企業アドバイザー活動、調査活動などに従事。21世紀社会デザイン研究学会コーズ・リレイテッド・マーケティング研究会代表。日本広報学会、日本NPO学会会員。著書『世界を救うショッピングガイド― Causebrand Handbook』(タイトル刊)。11月には新たなソーシャルキャンペーン「ありがとうProject」が始動。
(所属・役職等は取材時点のものとなります。)

 震災が緊急支援から復興支援の段階に移り、継続的な支援が求められる中、商品やサービスの収益の一部を寄付するコーズ・リレイテッド・マーケティングが注目されている。この寄付につながる商品・キャンペーンを「寄付つき商品(コーズブランド)」と呼ぶことを提唱するのが、「1億人のバレンタインプロジェクト」をプロデュースした野村尚克氏だ。プロモーションの行き詰まりを打開し、コーポレートブランドを作る「寄付つき商品」の考え方とは?

――コーズ・リレイテッド・マーケティングとは、どういうものなのでしょうか。

 略してCRM、コーズ・マーケティングと言う場合もあります。定義はいろいろありますが、私自身は「収益の一部がNPOなどへの寄付を通じて、社会的課題の解決のために役立てられるマーケティング活動」という言い方をしています。図に書くと、マーケティング活動と社会的課題の解決活動の合わさった部分、ここがコーズ・リレイテッド・マーケティングの領域です(図1)。企業の社会貢献のテーマ、企業が取り組むべき社会的課題には環境、医療、子ども、貧困など様々なものがあります。そうした社会的課題を寄付つき商品、私たちはそれをコーズブランドと呼んでいるのですが、その収益の一部を当てることで解決していこうというのが、コーズ・リレイテッド・マーケティングの考え方です。
 「コーズ(cause)」は、一般的には「原因・理由」という意味ですが、コーズ・リレイテッド・マーケティングでは「課題」を解決するという意味で使われています。

――いつごろから注目されるようになったのでしょうか?

 日本ではこの5年くらいですね。ボルヴィックが2007年から「1L for 10L(ワンリッター フォー テンリッター)」プログラムを実施したことがきっかけの一つです。ユニセフと協働してアフリカのマリ共和国に井戸を掘るなどの活動を行っているのですが、ボルヴィック購入1Lごとに水10Lが供給されるという、とても素晴らしいプログラムです。
 コーズ・リレイテッド・マーケティングが生まれたのはアメリカです。1983年にアメリカン・エキスプレス社が、自由の女神を修復するために同社のカードへ新規入会すると1ドルを、利用するごとにつき1セントを寄付するキャンペーンを行ったのが始まりです。このキャンペーンによって同社は新規入会者を45%、カード利用額を28%増加させ、3か月間で総額170万ドルの寄付を集めました。これが一つのきっかけとなり、その後アメリカで多くのコーズキャンペーンが立ち上がりました。日本で注目され始めたのは、それから20年以上たってからということなんです。

3つのステークホルダー

――コーズキャンペーンが、最近まで日本で普及しなかった理由は何でしょうか。

 「コーズ」は成熟された社会で支持されるマーケティング手法だからだと思います。生活が豊かになると「モノよりコト」が重視されるようになり、人や社会に対して配慮する「利他的行動」が増えてくる。「公共」という考えも一般化し、ボランティア活動も当たり前になる。最近、寄付やチャリティに参加する人が増えてきているのも、そうしたことが背景にあると思います。

――コーズ・リレイテッド・マーケティングと一般のマーケティングの違いは何でしょうか。

 社会的課題の解決を行うことと、もう一つはNPOとも連携することです。コーズ・リレイテッド・マーケティングには、「消費者」「企業」「NPO 」の3 者のステークホルダーがいます。
 今回の震災でも活躍しましたが、最近は4万を超えるNPO法人が日本にはあります。NPO法(特定非営利活動促進法)ができたのは1998年ですが、それから急激に増えています。規模もパパママストア的なものから1つの国家と同じくらいのものまである。例えば、貧困地域や紛争地域で医療支援を行っている「国境なき医師団」はノーベル平和賞を受賞していますし、ロシアのチェチェン侵攻については名指しで非難声明を出しています。このようにNPOは非常に独立したものなんですね。あとで詳しく説明しますが、NPOとどう接するかもコーズ・リレイテッド・マーケティングでは重要になります。
 別な言い方をすると、この3者は、それぞれコーズ・リレイテッド・マーケティングにかかわる目的・捉え方が異なるということです。
 企業にとっては、CSRの一環として社会的責任を果たすことや、また、寄付つき商品を売ることでマーケティングの一環としてかかわったりする。NPOにとっては、寄付金を集める場であったり、自分たちの活動を知ってもらう場として考える。それから、消費者にとっては、気軽にできる社会貢献であり、商品選択の一つの基準、コンセプトになるということです。
 コーズ・リレイテッド・マーケティングは、製品やサービスを提供する企業、寄付を受けて社会的課題を解決するNPO、購入する消費者の3者がメリットを享受できる仕組みなんですね(図2)

コーズに対する消費者意識

――寄付つき商品は、日本の消費者にどの程度受け入れられるようになっているのでしょうか。

 東日本大震災以降に私たちコーズブランド・ラボで行った調査があります。まず「社会貢献活動に関心がある」という質問に95.0%の人が「ある」と答えています(図3)。次に、「あなたが行っている社会貢献活動は何ですか」という質問に対して、寄付つき商品の購入が2番目に来ています(図4)。この調査ではクリック募金が1位になっていますが、これはこの調査をクリック募金サイトで行った影響もあると思います。また、「あなたは社会貢献活動につながる商品を買ったことがありますか」という質問には、76. 6%が「ある」と答えています(図5/2011年)。
 購入理由を聞くと、「似た商品を買うなら社会貢献につながる方が良いと思ったから」が72.3%と最も多くなっています(図6)。寄付つき商品は価格を下げずに売れるという点を強調しておきたいと思います。
 それから、2009年に慶應大学とNTTレゾナントが行った調査があるのですが、この時は寄付つき商品の購入経験者は45. 5%でした(図5/2009年)。
 同じ調査で、具体的にどんな寄付つき商品を買っているかも聞いていますが、多いのは食品・飲料、日用品です(図7)。

――寄付つき商品は、価格を下げずに売れるというのは?

 価格訴求以外のプロモーションが流通でも求められていることがあります。寄付つき商品で買われているのは食品・飲料、日用品が多いと言いましたが、コモディティ化した(差別化ポイントのなくなった)商品は、価格プロモーション一辺倒になってしまいがちです。それに代わるプロモーションとして流通から支持されているんですね。
 先ほどの慶應大学とNTTレゾナントの調査に戻りますが、この調査では、寄付つき商品を買ったことがない人が54.5%いました(図5/2009年)。この人たちに寄付つき商品の購入意向を聞くと、そのうち74. 1%は「買いたい」と答えています(図8)。購入経験者と未購入だけど購入意向がある人を合わせると、86%くらいの人が寄付つき商品の購入を期待できる層ということになります(図8説明参照)。
 また、寄付つき商品の非購入者で購入意向のある人たちの買いたい商品を見ても、食品・飲料、日用品です(図9)。ただし、図7と図9を比較して欲しいのですが、購入経験者では衣料品を買った人たちが25%しかいないのですが、非購入者では衣料品だったら買いたいという人が倍近くいる。衣料品も寄付つき商品に向いていると思います。

コーズとCSR

――コーズが有効なのはプロモーションだけなのでしょうか。

 CSR部門がコーズに取り組んでいる企業もありますね。2003年はCSR元年と言われましたが、ここ数年、企業は特に環境に対しての貢献をアピールしてきました。その結果、消費者は企業に対してどのようなイメージを持つようになったか。これも、調査で見てみたいと思います。
 ノルド社会環境研究所が2007年に調査したものですが、まず、「社会や環境に配慮し、貢献している企業と言えば、どこですか」という質問に挙げられた企業は、トヨタ自動車が2位以下に大きな差をつけて1位でした(図10)。この調査は2006年にも実施しているのですが、そのときも1位です。
 では、なぜトヨタは「社会や環境に配慮している企業」というイメージが強いのか(図11)。トップに来ているのは「環境に優しい製品/サービス」で70%に達しています。これはハイブリッドカーのプリウスを想起しているのだと思います。
 これまで多くの企業は、レピュテーション(評判)を上げるために工場見学やNPOへの寄付などを地道に行ってきたと思うのですが、この調査は商品を通した社会や環境への貢献の方がコーポレートブランドにプラスに働くことを示しています。寄付つき商品も、そういう使い方ができるということです。
 ただし、その場合に注意したいのは、コーポレートブランドと商品ブランドの距離が近くなければいけないことです。例えば、ボルヴィックはダノンという企業のブランドですが、「1Lfor 10L」によって、ボルヴィックという商品ブランドの価値は向上したけれど、企業ブランドへの影響は感じ難い。ボルヴィックの場合は、そういうブランド戦略をとっているからいいのですが、コーポレートブランドと結びつける場合は、コーポレートと商品の距離が近く、企業理念や会社の哲学と結びついたものでなければいけないということなんです。

ALL JAPANを目指す連合型コーズ

――野村さんが今年から始めた「1億人のバレンタインプロジェクト」は、また違う試みだと思うのですが。

 これは連合型のコーズです。日本では、「ピンクリボン」などがそうですね。毎年10月には、銀行や保険会社、化粧品メーカーなど複数の企業が協賛して乳がん早期発見、早期治療のピンクリボンキャンペーンが行われます。「1億人のバレンタインプロジェクト」も、それに近いモデルです(図12)。
 バレンタインは、女性からチョコを贈って「愛」を告白する活動で、ここ数年は、義理チョコ、友チョコ、逆チョコといろいろ出てきましたが、市場も成熟して売り上げも横ばい。そこで原点に帰って、いまの時代の「愛」とは何なのかを考えた。そこで、バレンタインを世界の困っている子どもたちへも同時に愛を贈る機会にできないかと考えたのです。コンセプトは簡単で、「寄付チョコ」でもう一つの愛を届けよう。「バレンタインを子ども支援のチャリティの場にしよう」というのが、このプロジェクトのミッションです。
 日常の店頭では企業が連携してプロモーションを行う姿を目にしますが、企業連合そのものが効かなくなってきたという話をよく聞きます。実はNPOも同じで、例えば、子ども問題を発信するイベントや食料問題をPRする「○○デー」など、NPOが連携してキャンペーンを張るのですが、世の中にはあまり知られていない。理由は簡単で、告知するお金も乏しければ、日本ではNPOが何か始めてもメディアが取り上げてくれないからです。企業だけでプロモーションをやっても、それが一般のメディアに取り上げられることは少ないと思うのですが、NPOも同じ悩みを抱えている。
 そのような中で、ボルヴィックという一つのブランドとユニセフという一つのNPOが協働したキャンペーンが注目を集めた。だったら、この企業とNPOとの連携を創りながらも、さらに横にたくさんつなげればよりシナジーが生まれるというのが「1億人のバレンタインプロジェクト」の発想です。しかし、複数の企業、NPOがプロジェクトに参加するためには、ハブになってまとめる人間が必要です。それで言いだしっぺの私がプロジェクトを立ち上げたということなんです。

――プロジェクトで集まったお金をNPOに分けるという形を取っているのでしょうか。

 個々の企業が、それぞれ寄付先のNPOと話しあって決めるという形を取っています。企業とNPOの接点というか、一緒に組む場を作りたかったので、あえて直にしたんです。だから、中には1つの企業が複数のNPOを寄付先に選んでいる場合もあります。このプロジェクトがいい経験になって、これからも一緒に組んでいこうという話になってくれるのが理想です。

――プロジェクトを応援する人たちの顔ぶれも多彩ですね。

 一般コンシューマー向けのプロジェクトでは、関心を持ってもらうためにタレントに推薦人になってもらうのが一般的です。しかし、それだとタレントだけが活動しているように見えてしまう。この活動は様々な人々が参加することによって成立するものです。そのためには「ALL JAPAN」の繋がりをつくらなければならない。それで推薦人もタレントだけでなく、様々な企業の経営者や大学教授、NPOや社会起業家などに入ってもらったんです。
 その結果、バレンタイン当日にNHKの「おはよう日本」で単独で紹介されたり、バレンタイン前の祝日には読売テレビの「ミヤネ屋」で、「今年は寄付チョコ。バレンタインのキーワードは社会貢献」という形で放送された。新聞でも取り上げられ、最終的には3000万円近い寄付が集まりました。

NPOとどう連携するか

――コーズを実施する場合、NPOをどう探せばいいのでしょうか。

 正論で言うと、本当に取り組みたい、支援したいと思っている社会的課題があるなら、それに取り組んでいるNPOと連携すればいいということです。実際、企業を対象にしたセミナーでもそういうことがよく言われます。しかし、それを聞いた企業の人たちは「うーん」と言って黙ってしまう。「そうなんだけど、そうじゃなくて、うちは要はコーズをやりたいんだ」(笑)というのが、企業の本音です。それで困って私のようなプロデュースをやっている人間に相談にくるというパターンが多いです。

――その時、どういうアドバイスをするのですか。

 社会的課題にもいろいろありますが、その中で最初に考えるべきは自社です。自社が、これまでどんな社会貢献活動をしてきたかを考えて、それに合うものや哲学に合うNPOを選ぶ。それから、プロダクトマネジメントをきちんとやっている会社なら、商品のイメージがありますから、それに合ったものから考える。
 もしくは、徹底的に消費者ニーズを重視して、まずは消費者が望む社会的課題を調べるというのもあります。実は、社会的課題でも消費者に支持されやすいものと支持され難いものがある。日本では、「環境」と「子ども」がコーズの“2強”と呼ばれています。今年は震災があったために「緊急人道援助」が注目されましたが、通常は関心が低いんですね。
 日本のNPOの総収入・募金収入の順位をみると、1位はユニセフで2位を大きく引き離しています。やはり、人気のあるNPOと組みたいというのは企業の本音としては仕方がないところもありますが、小さくても良い活動をするNPOはたくさんあります。また、そういったNPOは大手にはない動きもする。だから、企業にはNPOを正しく評価できる目を養って欲しいと思いますね。

――NPOとのつきあいは、どういう点に注意すべきなのでしょうか。

 NPOは独立性を非常に重んじます。コーズキャンペーンをやれば、自分たちがアイコンとして使われ、その企業を評価しているようにも映る。だから、ちゃんとした企業か必ずNPOからチェックが入ります。
 それから、例えば粉ミルクで子どもを育てることについて、国際協力NGOの中では意見が分かれます。あるNGOは認めていません。ですから、粉ミルクの売り上げの一部を寄付したいと言っても、それは健全な子どもの育成にならないという理由で寄付を受けないNGOもいます。つまり、それぞれのNGOによって考え方に違いがあるのです。
 また、日本社会には「お金をもらう方が下請け」という考え方があると思いますが、NPOには通じません。例えば、化粧品メーカーなら、商品に使っている成分を事前に聞かれることが多くあります。そして、その成分がNPOの考えに反していれば、やはり寄付は受けてもらえません。最近では、コンプライアンス(法令遵守)で問題が起こっているところも寄付を受けてくれませんし、逆に早急に正すよう提言されます。

――国際協力NGOとおっしゃいましたが、NPOとNGOは、どう違うのでしょうか。

 NPOは国内用語です。NonprofitOrganizationの略で、非営利組織という意味です。一方、NGOはNon-Governmental Organizationの略で、国連機関が名付けたものです。日本ではNGOはNPOの中に含まれますが、国内活動しているのがNPO、途上国や国際協力を行っているのがNGOというのが事実上の標準となっています。

――NPOは4万以上あるということですが、どのように探したらいいのでしょうか。

 NPOの認証機関には2つあって、1つは内閣府、もう1つは都道府県です。認証されたNPOは、「内閣府NPOホームページ」や各都道府県のホームページに掲載されています。両者にほとんど違いはなくて、内閣府認証は全国的に活動する団体が認証を求める傾向が強いといったところです。
 それから、NPO認証は市民のボランティア団体に法人格を与えるという考えでできたもので、1年ごとの収支計画も内閣府や都道府県のホームページに掲載されていますが、それは市民がチェックするのが前提です。ですから、NPOが問題を起こしても認証した行政に文句を言うのは筋違いです。それは市民がやるべきことというのがNPOの基本なんですね。そういう意味でも、NPOは成熟した社会でないと成り立たないということです。

――NPO探しは難しそうですね。

 「中間支援NPO」というところもあります。NPOの活動を支援するNPOで、第3者の立場からNPOを評価したりしています。大都市にはたいていあり、そこに行けば、例えば、認定取得の有無や透明な会計を行っているかなど、いろいろな情報がもらえます。代表的なところでは、今回の震災でも活躍していますが、日本財団のCANPANセンターや国際協力NGOセンター(JANIC)、せんだい・みやぎNPOセンターなどがありますね。

手軽にできるが難しさもある

――コーズ・リレイテッド・マーケティングとは何か、改めてお聞きしたいのですが。

 コーズ・リレイテッド・マーケティングは、社会的課題の解決と商品の価値を同時に高めるものであり、NPOとのコラボレーションマーケティングと言えると思います。企業とNPOが連携することで、互いにないものを補い合い、相乗効果を発揮する仕組みです。それは「モノよりコト」が重視される成熟社会に合った取り組みであり、コモディティ化した商品の差別化の手段にもなるということです。
 例えば、ミネラルウォーターはコモディティ市場ですが、たくさんの商品が溢れています。消費者はその中から特徴を理解して選択しますが、「価格が高いか安いか」、「国産か輸入品か」などが最初に来る選択要因でしょう。しかし、輸入もので価格帯も同じ、国産で価格帯も同じとなると差がありません。そのとき、寄付つき商品が差別化の手段になるということです。実際、「1L for 10L」プログラムを実施しているボルヴィックは輸入ミネラルウォーターで第1位ですし、寄付ではありませんが、エコを訴求した「いろはす」は市場全体で1位です。
 もう1つの特徴は、寄付つき商品は売上連動型だということです。販促費のような固定の予算措置の必要はないので、売れた分だけを寄付すれば良い。だから、トライアルしやすく、無理なく継続的に行うこともできる。社会的課題の解決には時間がかかりますから、そういう意味でも価値ある取組みです。
 東日本大震災を例にとると、その意味がよりはっきりすると思います。これまで企業は、義援金や物資の提供などの「緊急支援」を行ってきました。しかし、今後は復興支援が大事になってきます。復興支援とは、言い換えれば「継続支援」です。また、支援には義援金のような「後方支援」と、現地に行ってボランティア活動などを行う「前方支援」があります。これらを整理すると図13のようになります。
 こうして見ると、企業の多くの支援は左上の活動なのがわかります。また、現地に行って災害ボランティアを行う企業もありますのでそれは右上の活動です。
 しかしこれからは、緊急支援フェーズから復興支援フェーズに入ります。そこで大事になるのが継続支援です。例えば、現地の雇用創出は前方支援です。では、後方支援として企業は何ができるか。実はここに「寄付つき商品」の役割があると思っています。売上連動型なので無理なく継続的に支援できるということなんです。
 もう一つ、コーズに取り組む場合に大事なことがあります。それは、小さな批判は必ず起こるということです。

――偽善的だということですか。

 企業人は「偽善」と言われることを非常に恐れます。消費者の中には、もちろんそう言う人もいる。しかし、実際は善意に受け止める人がほとんどなんですね。
 極端な例を挙げると、環境NPOに携わっている人やグリーンコンシューマーはミネラルウォーターを買いません。みんなたいていマイボトルに水道水です。わざわざペットボトルに詰めて、遠くからCO2を排出して運んで売ることに何の意味があるのかという考えです。しかし、途上国支援のNPOは、そんなことは気にしません。つまり、哲学が違うのです。
 何が言いたいかというと、どんなに良い活動をしても、ほめる人がいれば必ず批判をする人もいる。だから、小さな批判にこだわるなということなんです。
 それでも、カスタマーセンターに批判の電話が入ると、企業は揺れます。だから、事前に支援の内容を細かく書けば大丈夫だろう、理解されるだろうと、プロジェクトをどんどん複雑なものにしてしまう。しかし、わかりにくく勘違いしやすい表現になるだけで、逆のレピュテーション(批判)がワッと起こる可能性が大きくなるんですね。コーズ・リレイテッド・マーケティングは、共感を集める右脳型のマーケティングです。だから、とにかくすっきりわかりやすく、「この商品を買ったら井戸を掘ります」「売上から1円を寄付します」というようなシンプルなものにし、透明かつ報告もきちんと行うことが大事なんです(図14)。
 最後にもう一つ付け加えるなら、コーズ・リレイテッド・マーケティングは社員のモチベーションも高めるということです。営業の人たちも張り切って売ってくれる。もちろん消費者や取引先から評価されるというのもありますが、社会に貢献する商品を売るのは気持ちが良く、そんな会社を誇りに思うからです。コーズ・リレイテッド・マーケティングは、マーケティングの行き詰まりを打開するだけではなく、様々な人をファンにする新たな企業活動そのものでもあるのです。
記事作成:2011 October

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