コンシューマーからショッパーへ

2017.09.19

中央大学ビジネススクール(大学院戦略経営研究科) 教授 中村 博 氏

中央大学ビジネススクール(大学院戦略経営研究科) 教授 中村 博 氏

早稲田大学商学部卒、経営学博士(学習院大学)、流通経済研究所主席研究員、専修大学商学部をへて現職。主著に「新製品のマーケティング」(中央経済社、「価格・プロモーション」(有斐閣アルマ 共著 )、「プライシング・サイエンス」(同文館 共著)、「マーケット・セグメンテーション-購買履歴データを用いた市場機会の発見-」(白桃書房 編著)など。
(所属・役職等は取材時点のものとなります。)

 ここ数年、小売業は消費者の低価格志向に、メーカーはそれと同時に、ブランドのコモディティ化に苦しんできた。そこで注目されるようになったのが「ショッパーマーケティング」だ。生活者をコンシューマー(消費者)としてではなくショッパーと捉えることで、マーケティングはどう変わるのか。中央大学ビジネススクールの中村博教授に聞いた。

―― 最近、日本でもショッパーマーケティングということが言われ出しましたが。

 ショッパーマーケティングとは、売場価値とブランド価値を高めるために、「ショッパー」の購買行動を理解し、店頭での購買モードを高め、購買に至らせるすべてのマーケティング活動を指します。ショッパーマーケティングは、これまでの店頭プロモーションやメーカーの商品開発、コミュニケーション戦略の行き詰まりを打開する突破口になると考えています。

―― ショッパーは日本語では、何と言ったらいいのでしょうか。

 そこは私も悩んでいて、ぴったりの日本語がないので「ショッパー」と英語のまま言っているんですね。
 まず言えるのは、コンシューマー(消費者=生活者)やカスタマー(顧客)とは違うということです。これまでメーカーは、コンシューマーを想定して商品開発をしてきました。そして、その商品の購入者はカスタマーと呼ばれていたわけです。
 では、ショッパーは何かというと、例えばお菓子なら、買う人(ショッパー)がお母さん、食べるのは子ども(カスタマーあるいはユーザー)ということになります。ショッパーは、この「買う人」のことです。
 ショッパーという視点で見ると、これまでとは違うアプローチが見えてきます。例えば、ショッパーは購入する商品の7割を店内で決めています。また、陳列してある商品を見る時間も、平均するとわずか2秒です。そうすると、POPも説明型よりも一瞬でわかってもらえる情緒型が有効だということがわかります。
 また、ショッパーという視点は小売の改革だけでなく、メーカーにとっても非常に有益です。これまでメーカーは、商品の効用やそれを使うシチュエーションについては一生懸命考えてきましたが、買う人、つまりショッパーの気持ちまで考えた商品開発をしてきませんでした。
 ショッパー視点で見れば、小売業の売り方やメーカーの商品開発も変わってきます。それが、ショッパーマーケティングの基本的な考え方です。

ショッパーマーケティングの背景

――「ショッパーマーケティング」が言われ出したのは、いつ頃からなのでしょうか。

 2007年に、世界最大の食品企業団体であるGMA(米国食品製造業協会)が言い出した言葉です。最初はウォルマートのインストアのデジタルサイネージ(インストアTV)への対応だったというのが私の見方です。
 このデジタルサイネージの普及には、クラフト、ペプシコ、ユニリーバ、P&Gなどが参加していますが、全米のウォルマート約2700店舗をネットワークし、その来店者は1週間に1億2700万人に上ります。一方、アメリカの3大ネットワークABC、CBS、NBCのイブニングニュースの視聴者は6800万人に過ぎません。しかも、店内にいるショッパーは買う気満々ですから、そこで流すコマーシャルは、(サイネージが見られるという条件付きですが)テレビよりはるかに効果がある。もちろん、広告料金もテレビよりはるかに安い。ウォルマートは、そういうセールストークでメーカーから協賛企業を集めたのです。
 その頃、P&GのCEOが「メーカーはコンシューマーと交渉しているというのに、小売業はショッパーと交渉できる」という名言を残しています。

―― ウォルマートと食品メーカーが、ショッパーマーケティングを作ったということですか。

 きっかけはウォルマートのデジタルサイネージだったのですが、大きな流れとしては、メーカーのEDLP(エブリデー・ロープライス)対応だったと私は見ています。ウォルマート流の低価格販売を続けていると、商品はあっという間にパリティ化(同質化)、コモディティ化(差別化の余地のない一次産品化)します。それに、どう対応するかが、メーカー側の課題だったのです。
 もう少し具体的に言えば、アメリカでは小売業の上位集中で低価格圧力が増したことに加え、PB(プライベートブランド)も2割を超えるまでになってきていました。また、消費者も低価格志向になり、指名買いが減少したこともあります。さらに、市場が多様化し、マス広告が昔ほど効率的ではなくなっていました。ただでさえ商品間の差異がなくなっているのに、放っておくと、低価格化に歯止めがかからなくなる。そうしたことが、ショッパーマーケティングが注目されている背景にはあるのです。

―― 小売業の上位集中が進んでいる欧米だから、ショッパーマーケティングが注目されているということですか。

 それが理由の一つになっていますが、日本にも当てはまることだと思っています。日本は小売業の上位集中化が進んでいないとよく言われますが、私はそうは思いません。イギリスは食品小売業の上位4社で6割を占めるほど集中化が進んでいすが、ヨーロッパの国々は比較的小さいですから、日本の都道府県をヨーロッパの1か国と考えると、事情はそんなに変わらないんですね。
 例えば北海道では、アークスとコープさっぽろの2つの食品スーパーが強くて、この上位2社で約40%のシェアを占めています。首都圏は別ですが、県別で見ていくと、地場の強いスーパー2、3社でシェアが5割を超えているところが多いのです。

―― そうすると、日本にもショッパーマーケティングは有効だということですか。

 そう思います。各県の上位の食品スーパーを見ていくと、低価格で商品を消費者へ提供する「エブリデイ・ロープライス戦略」と、価格を期間限定の特売などにより変動させる「ハイアンドロー戦略」でシェア争いをしていることが多いのですが、後者の戦略をとっているスーパーにとって、ショッパーマーケティングは、非常に有効なマーケティング手法になると思っています。例えば、北海道では、アークスが「エブリデイ・ロープライス」なのに対し、コープさっぽろは「ハイアンドロー」です。
 これまでも、メーカーは商品の価格低下を防ぐために、ISM(インストア・マーチャンダイジング)やカテゴリーの売上や利益を最大化するカテゴリーマネージメント(カテマネ)などに取り組んできましたが、あまりうまくいきませんでした。ISMは、店舗効率の目線で消費者を見てしまうため、顧客の潜在的ニーズに応えられないという限界がありました。また、カテマネの中心は定番の棚ですが、日本の場合は売上の半分を占めるエンドなど定番外売場での展開も含めてカテマネの展開をしていることもあり、小売およびメーカーともに人手不足やノウハウ不足でうまくいきませんでした。そうすると、価格プロモーションにどうしても引っ張られてしまう。特売をどうするか、エンドをどうするか、チラシをどうするか、という価格の話になってしまったんですね。そういう中で、マーケットシェアを取ろうとすると、どうしても値段を下げて、売上を上げるというストーリーになってしまう。それが、ここ10年ぐらいの現状だったと思います。

ショッパーとFSP

―― これまでの店頭プロモーションとショッパーマーケティングの違いは何でしょうか。

 売場の生産性を上げようというのがこれまでのISM、カテマネだとしたら、ショッパーマーケティングはターゲットマーケティングや五感マーケティングによって、ショッパーそのものにアプローチしようという考え方です。その背景には、ショッパーを知る手段の進化があります。1つは、POSや顧客カードなどのID付きPOSデータを開示する小売業が増えてきたこと。2つ目は、先ほどのウォルマートのデジタルサイネージのようにネットや技術の進化で、新しい店頭プロモーション手段が増えてきたこと。3つめはショッパーインサイトの把握や効果測定が進化していることがあります。
 特に、ショッパーマーケティングの有力な手段になるのは、ポイントカードなどのID付きPOSデータを使ったFSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)です。
 イギリス最大の小売企業であるテスコがその代表例ですが、FSPから得られる顧客の購買履歴と商品に付与されたライフスタイル属性を組み合わせることによって、効果的なセグメンテーションを作ろうとする試みが始まっています。

―― ライフスタイル属性を付与するというのは?

 テスコでは「商品DNA」と呼んでいますが、単品ごとにあらかじめ「ライフスタイル属性」を新商品が入る時点で登録していくわけです。
 テスコがライフスタイルの属性を付与しているのは、扱っている全商品ではなく、主要な売れ筋の単品8500品目についてですが、それぞれの単品について新商品が出た時に「健康によい商品」「鮮度がある商品」「NBまたはPB商品」などの属性を振り、商品データベースに入力します。
一方、テスコの顧客のほとんどは「クラブ・カード」というポイントカードを持っています。そうすると、いつ、どの商品を何個、いくらで買ったかという履歴データが取れます。
 次に、顧客の購買履歴からどのような属性の単品をよく購入しているか分析して、各顧客を「価格重視派(経済的に豊かでない)」「主流派(平均的顧客)」「保守派(外見保守的で高齢者)」「健康志向派(健康的なライフスタイル)」といったライフスタイルに分け、顧客セグメントを作成するわけです。
 さらに、 これらの顧客クラスターが各店舗にどのような構成比で存在するかを確認し、店舗プロフィールを作成し店舗の特徴を把握する。そして、店舗別に各クラスターに対応した棚割表を作成することによって、ライフスタイルに対応した個店別のマーチャンダイジング・プログラムやマーケティング・プログラムを提供するといった活用の仕方をしています。
 ライフスタイルと購買履歴の両面から作成した顧客セグメントを徹底して活用しているんですね。

―― テスコが、そうした顧客セグメンテーションを始めたのは、いつごろからですか。

 ライフスタイルと購買履歴を組み合わせた顧客セグメントは、1999年からです。テスコが「クラブ・カード」と呼ばれるロイヤルティ・プログラムを開始したのは1995年からですが、購入金額1ポンドにつき1ポイントが提供され、四半期ごとに累計が150ポイントに達すると1.5ポンドの自社の店舗で使える買物券を提供するというシンプルなプログラムで、基本は今も変わりません。
 このプログラムはイギリスの小売業では初めての試みで、導入後半年で発行枚数は約850万枚に達し、カード保有者はテスコの顧客の70%、売上高の75%がカード保有者によってもたらされたのです。その結果、1996年にはそれまで売上高1位であったセインズベリを抜いて、テスコがトップに立ったわけです。
 1996年5月から年4回、会員専用のクラブカード・マガジンを発行していますが、翌年から、「学生」「家族」「ヤングアダルト」といったデモグラフィックス属性によってセグメントしたものに変更し、その後もさまざまなセグメンテーションの方法を試みています。
 テスコが、ライフスタイルと購買履歴を組み合わせたセグメントを始めたのは1999年からですが、最初はこのクラブカード・マガジンに掲載されているクーポンの回収率をより高めるためだったのです。クラブカード・マガジンには、ライフスタイル別のクーポンが添付されているのですが、2003年時点では発行部数2000万部、800万バージョンになり、ほとんどワンツーワンに近い内容の情報誌になっています。

商品DNAの考え方

―― ライフスタイルと購買履歴を結びつけるメリットは、どこにあるのでしょうか。

 これまでも、性別や年齢、あるいはライフスタイルなどの違いによってマーケットセグメンテーションは行われてきました。しかし、同じ20代の若者でも選択する商品は異なります。また、ライフスタイルによるアプローチも行われてきましたが、特定のライフスタイルの消費者に直接コミュニケーションすることが困難という欠点があったんですね。その結果、どうしてもマーケティング効率が低くなってしまっていたのです。
 その一方で、顧客カードの購買履歴を基にした「購買行動セグメンテーション」も、これまで行われてきました。しかし、購買履歴データからだけでは、なぜその商品を購入したかがわからないという欠点がありました。
 テスコの商品DNAを使った分析は、ライフスタイルセグメンテーションと購買行動セグメンテーションを合わせることで、マーケティング効率を飛躍的に高めることができると期待されているのです。

―― 商品DNAは、どのように決めているのでしょうか。

 消費者調査に基づいて商品DNAを付与することもできますが、テスコでは自社の判断でライフスタイル属性を付与しています。
 商品DNAの基本的な考えは、ブランド戦略のフレームワークの提唱者であるデビット・アーカーの考え方に基づいています。例えば、マヨネーズのPB(プライベートブランド)を購入する消費者は倹約志向だろうし、脂肪分の少ないマヨネーズを購入する人は健康志向の消費者だということは容易に推測できますが、逆に考えると、最終的に消費者がブランド選択を行う際に決め手となるのは、ブランドを購入することによって受け取る何がしかの「便益価値」があるからです。
 この便益価値には「機能的価値」「情緒的価値」「経済的価値」があります。「機能的価値」とは、消費者に機能面の効用を提供する製品属性にもとづく便益で、機能・性能、原材料、安全性、サポート、付帯サービスなどであります。「情緒的価値」は、特定ブランドを買ったり使ったりすることが消費者に与える肯定的な感情で、見た目・デザイン、質感や触感、原産地、物語性、ブランド名などが含まれます。「経済的価値」は、購入から使用にいたるまでにかかる費用のことです。つまり、個々の消費者の生活価値(ライフスタイル)が、これらのどの「便益価値」を重視するかを決め、最終的なブランド選択を行うということです。テスコの商品DNAというのは、ブランドが提供するこれらの「生活価値」とブランドの「便益価値」のことなんです。

顧客に合わせレジクーポン

―― 日本ではそうした試みは行われているのですか。

 山梨の食品スーパー・オギノが数年前から取り組んでいます。テスコとは若干異なりますが、オギノでも単品1万数千品目にライススタイル属性を振っています。オギノには約40万人のカード会員がいますが、カード保有者の売上は全体の売上の8割を超えています。その人たち一人ひとりを健康派、グルメ派、簡便調理派、価格重視派といったセグメントに分けています。
 こうした顧客セグメントに基づいて、オギノでは2008年からレジで「ダイレクトレシートクーポン」を発行しています。顧客がレジで精算する時に、その顧客のライフスタイルにあったクーポンが、レシートといっしょに出てくる仕組みです。それまでは、同じ仕組みを使ってDMをそれぞれの顧客に送っていたんですね。売上効果は両者変わらないのですが、「ダイレクトレシートクーポン」はDMと違って送料やハガキの制作費がかかりません。また、DMは高額商品ならいいですが、100円、200円の低額商品では割が合わないんですね。
 この「ダイレクトレシートクーポン」は普通のPOSではできません。リアルタイムPOSと言って、顧客カードをスキャンした瞬間に本部のコンピューターがその顧客にぴったりのクーポンは何かをすぐ返してくれる仕組みが必要です。ショッパープログラムではテスコが世界一で、オギノもテスコに行って学んでいるのですが、オギノの「ダイレクトレシートクーポン」にはテスコも驚いていました。

―― オギノのような取り組みをしている小売業は増えているのでしょうか。

 先ほどのコープさっぽろなどいくつかありますね。それから、ID付きPOSデータの開示をしているところや、その準備をしているところが、ローカルの食品スーパーで今年から増えてきています。ローカルの食品スーパーと言っても、扱っている商品は多いですから、店のバイヤーだけでは対応が難しいからです。全国展開しているナショナルチェーンは独自のマーチャンダイジングを行えますが、ローカルのスーパーは、やはりメーカーからの提案をもらわないとなかなか売上を上げられない。そういうことから、POSデータやID付きPOSデータを開示するところが増えているんですね。

売場の滞在時間は2秒

―― 売場については、どういう研究が進んでいるのでしょうか。

 最初に売場で立ち止まる時間は2秒だと言いましたが、これまでの調査手法だと、もう少し長い調査結果が出ています。普通は、調査員がお客さんを見てストップウォッチで測定しますから、測定可能な人を調べてしまうからなんです。一瞬見たような人は測定不能で、調査されないんですね。それで、人の年齢を画像で識別できるセンサーを売場に設置して調べた結果が、図6下のグラフです。

―― 最近は、画像でその人の年齢を識別できるようになっているのですか。

 センサーで自動識別して、その人の年代が8割から9割わかるようになっています。その方法で調べると、実は1秒未満が最も多く、次が1秒から3秒で、両者で8割を占めている。平均すると2秒くらいなのです。10秒以上見ている人は1%〜2%しかいません。
 ショッパーは、興味がないとすぐ行ってしまうんですね。だから、店頭では理性に訴えるよりも感性に訴える方が効くのです。説明するよりも直感に訴えた方がいい。POPに字をたくさん書いても読んでくれない。7文字程度が理想だと思っています。

―― 瞬間でわかることが大事だと。

 実は、この時の調査は、エンドのシチュー販売で、メニュー提案のPOP有りとPOP無しを先ほどのセンサーを使って比較したものです(図7)。
 エンドの立寄率、商品を手に取った検討率、実際に商品を買った購買率は、いずれもPOP有りが上回っています。さらに、センサーでエンドまでどの程度ショッパーが近づいたか平均距離も測定しましたが、POP有り1.75mに対し、POP無しは2.56mでした。
 それから、センサーで年代がわかると言いましたが、立寄率、検討率も年代別に何人いたか実際の数がカウントできます(図6上)。こうした調査をセンサーを使うことで、すべて自動でやっているんですね。
 この調査ではさらに、ID付きのPOSカードのデータを分析して、ジャガイモやニンジンといったシチューの材料が、シチューのエンドの効果によってどれだけ売れたかも調査しています(図8)。材料によって多少バラツキはありますが、ジャガイモ、ニンジン、正肉(鶏肉)は、あきらかにメニュー提案のPOP有りの方が上がったという結果が出ています。

――調査方法も、画期的に進歩している気がしますね。

 さらに言うと、デジタルサイネージをエンドに設置しておいて、このセンサーを、もちろんお客さんに見えないようにですが、設置しておけば、エンドに近づいてきた人の年代によって、流すメッセージの内容を変えることもできます。ちなみに、テジタルサイネージを定番の棚とエンドに付けた比較も行ったことがありますが、テジタルサイネージは定番の棚ではほとんど効果がないこともわかっています。こうした研究は今後も進むと思いますね。
 また、最近、五感マーケティングに関係するのですが、匂いが購買に影響を及ぼすことがわかってきました。

――店頭で実際に匂いを出すわけですか。

 エンドで実際に、商品の匂いを流すわけです。実は、デジタルサイネージよりも効果があると思っています。POPであれデジタルサイネージであれ、視覚情報です。視覚情報というのは、情報が一旦大脳に送られ、過去の記憶が呼び出されて、それから大脳辺縁系(古い脳)に行って「おいしそう」という感情がわいてくる。ところが匂いや味は、大脳を通らないで、いきなり大脳辺縁系に行きます。店頭の実演販売で焼き肉を焼いていると、匂いにつられて思わず食べたくなるのといっしょです。

―― 理性のフィルターを通らないわけですね。

 だから、反応が速いのです。もちろん、デジタルサイネージと一緒に使うこともできますから、今後はかなり強力なプロモーション手段になると思います。例えば、デジタルサイネージでお好み焼きの映像を流して、そこにビールとお好み焼きの具材を並べて、お好み焼きのレシピーを掲示して、お好み焼きをジューッと焼く音といっしょに匂い出すという使い方ですね。

すべてをショッパー接点で捉える

―― 機器の進歩もあるのでしょうが、店舗効率からショッパーに視点を移すことで、店頭プロモーションは画期的に変わりそうですね。

 店舗の購入決定は2秒の世界ですから、五感をくすぐることを考えないといけないんですね。それは、お客さんにとっても楽しいことだと思うのです。
 特にスーパーはいつも行くところだけに、季節感やハレの日といった五感を刺激する演出が必要です。店舗効率を追求していたこれまでのプロモーションからは、そういう発想は生まれにくかった。低価格販売のみを追求することは小売業にとっても、メーカーとっても、決していいことではありません。ハイアンドロー戦略の中で、お客さんにいかに楽しく買ってもらうかを考える。それが、ショッパーマーケティングだと考えています。
 また、最近は小売にとって大事なのは、ショッパー接点をどれだけ持てるかだと言われています。これまではスーパーもハイアンドロー、エブリデー・ロープライスの2業態だけでしたが、ここ数年はネット販売をやるところが増えてきています。それから、地方都市を中心にトラックに商品とPOSレジを積んで売る移動販売も注目されています。同じドライバーで、2回、3回と行くうちに購入金額も急激に増えていくんですね。
 ショッパーマーケティングの強みは、こうした業態の違いがあっても「ショッパー」という同じ視点で捉えられることです。もちろん、スーパーマーケット、ドラッグストア、ネット通販というような異業種でも有効です。しかも、メーカーにとっては、商品開発に新たな視点を提供し、ブランドのコモディティ化を防ぐ戦略です。ショッパーマーケティングの重要性は、そこにあると思っています。
記事作成:2011 April

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