店頭プロモーションの課題とこれから

2017.09.19

早稲田大学商学部 教授 守口 剛 氏

早稲田大学商学部 教授 守口 剛 氏

1957年新潟県生まれ。79年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。96年東京工業大学大学院博士課程理工学研究科経営工学専攻修了、博士(工学)。財団法人流通経済研究所を経て、97年立教大学助教授、98年同大教授。2005年から早稲田大学商学学術院教授。主な著書に『プロモーション効果分析』朝倉書店、『価格・プロモーション戦略』有斐閣アルマ(共編著)、『マーケティングの数理モデル』朝倉書店(共編著)、『マーケティング・サイエンス入門』有斐閣アルマ(共著)、『マーケティング・ハンドブック』朝倉書店(共監訳)。
(所属・役職等は取材時点のものとなります。)

 店頭プロモーションが注目されている。購買時点である店頭が、メーカー双方にとって重要なことは言うまでもない。しかし、多くの店頭では、日々の売り上げを作るためにどうしても価格訴求に頼りがちだ。今の店頭プロモーションが抱える問題と、今後の店頭プロモーションを考える視点を、早稲田大学商学部教授の守口剛氏に聞いた。
 顧客拡大を目的とした単発的なセールスプロモーションが行き詰まりを見せる今、店頭のプロモーションを活性化させる新たな視点とは何か。

──先生が店頭プロモーションに関心を持たれたきっかけというのは?

 大学で教えるようになる前は、流通経済研究所というシンクタンクで長年研究員をやっていました。そこで小売業とメーカー、卸との共同研究会をやっていたんですね。研究会は今も続いていますが、そこで小売業からPOSデータや顧客の購買履歴データを集めて、店頭でどういうマーケティング活動をやっていけば、メーカーも小売もハッピーになるのかというようなことを研究していました。今も流通経済研究所の仕事を手伝っていますが、その関係で、店頭プロモーションや顧客データを用いたプロモーションに関心をもって研究をしているんですね。

──そういう目から見て、店頭プロモーションの現状をどう思いますか。

 マーケティング活動の中でもセールスプロモーションは最終的に売り上げを作るという非常に大きな役割を担っていると思いますが、中でも店頭プロモーションは購買時点そのものであり、メーカー、小売双方にとって非常に重要だと思っています。しかし、店頭プロモーションには改善しなければならない点が多くあって、それは10年前も今も変わっていないと思いますね。

──改善しなければならない点というのは、どういうところですか。

 スーパーやコンビニ、ドラッグストアの店頭を考えるとわかると思いますが、まず、実際の店頭プロモーションは広告と必ずしも連動していないことがあります。その原因は広告と店頭プロモーションを担当するセクションが違うからです。流通との接点である営業セクションが実施をしているところがほとんどで、予算もマーケティングの予算ではなくて、販売促進費や流通施策費から出ているため、広告やマーケティングの目的と必ずしも連動していないんですね。
 広告とセールスプロモーションを連動させようという動きは、IMC(統合型マーケティングコミュニケーション)が言われ出した90年ころからありますが、それがなかなか実現できていません。

──広告とセールスプロモーションの連動は最近よく言われますが、なぜ強調されるようになったのでしょうか。

 モノを作って店頭に並べれば売れる時代が終わって、ブランド育成や顧客との長期的なリレーションシップを構築することが重要になってきたからです。そのブランドを育成し、確立していくために、メーカーは広告に多大な投資をしていますが、それが店頭と連動していないばかりか、店頭で安売りが頻繁に行われ、むしろブランド育成の足を引っ張っているケースが多いんですね。

──メーカーのブランド育成と小売業の商売は相容れないところがあると思うのですが。

 小売のPB(プライベートブランド)は別ですが、流通にとってどのブランドが売れようがあまり関係ないわけで、そこにメーカーとのギャップがあるのは確かです。メーカーはブランドに対する意識が非常に強いし、流通は店舗全体の売り上げ、利益を優先します。そのギャップを解消しようということで出てきた考え方が、「カテゴリーマネジメント」でした。カテゴリー単位のマネジメントをメーカーと流通が一緒にやっていこうという考え方ですが、これもメーカーのブランド育成やブランドマネジメントとうまく連動していないんですね。

短期的評価から長期的評価へ

──どうすればいいのでしょうか。

 短期的な売り上げだけではなくて、長期的な売り上げや利益を考えていくためには、セールスプロモーションの評価の視点を変えていく必要があると思います。つまり、これまでのような売り上げがどれだけ増えたのかという「量的な視点」だけではなくて、その増えた売り上げがどこからもたらされたのかという「質的な視点」が必要だということです。
 売り上げには、いろいろな源泉があります。プロモーションによって、いつも買ってくれている人が2個、3個とまとめ買いをしたというような「買い方の変化」で売り上げが増える場合もありますし、今まで他のブランドを買っていた人がスイッチして売り上げが増える場合もあります。あるいは、今までこのカテゴリーを利用していなかった人を新たに獲得した場合もあるでしょう。「増えた売り上げはどこからもたらされたのか」という視点が重要になると思うんですね。

──セールスプロモーションの実施後に売り上げが落ち込む、ということもよく聞きますね。

 それは、需要の「先食い」と呼ばれる現象ですね。例えば、醤油などの調味料や洗剤、歯磨きなど日常的に使われる商品で、購入ブランドが固定されている商品に起きやすい現象です。せっかくプロモーションを実施しても、「いつも買っている商品を安く売っているから、今のうちに買っておこう」という人ばかりだったら、確かにその時は売り上げは増えるかもしれませんが、長期で見れば売り上げは増えていないことになります。家に買い置きが増えたからといって、洗濯する回数や洗剤を使う量が増えるわけではないからです。
 それから、あまりうまくないプロモーションの場合、「共食い」ということも起こります。
 メーカーで言えば、自社のほかのブランドの顧客を食ってしまう場合ですね。会社全体で見れば、売り上げは増えていないことになります。
 小売業で言えば、Aブランドの売り上げは増えたけれども、ライバル会社のBブランドの売り上げは減ってしまった場合です。Aブランドのメーカーとしては評価できるかもしれませんが、小売業の立場からすると評価できないプロモーションということになります。

──ブランドのポジションによっても影響がある?

 特に先食いというのは、やはりトップブランドで起きやすい現象ですね。トップブランドの場合は、他のブランドからスイッチする余地が少ないからです。

──ブランドスイッチしやすい商品とそうでない商品もある?

 ブランドスイッチしやすい商品としては、ビスケットなどのお菓子が代表的な例ですね。バラエティシーキングと言いますが、いろんなブランドがあって、取っ替え引っ替え買うのが楽しみな商品では、ブランドスイッチが起こりやすいですね。

提案もタイミングが重要

──先食いでも共食いでもなく、新たな需要を創造するためには、どうしたらいいのでしょうか。

 それが、今後のプロモーションの非常に重要な役割になってくると思います。まとめ買いしたことが消費に結びつく、つまり、購入パターンの変化が消費パターンの変化に結びつくことが長期的な売り上げを考えるときには重要です。
 そのためには、普段その商品を使っていない人に新しい使い方、新たな消費のシーンを提案するなど何らかの提案がないと需要を創造するということはできないと思いますね。生活提案やメニュー提案など、いろいろな提案の方法があると思いますが、最近、重要だと思っているのがタイミングの提案です。
 消費者は大きく分けると2つの意思決定を店頭で行っています。1つは、あるカテゴリーの中からどれを選ぼうかというブランド選択の意思決定を行っている。洗剤を買う時に、どのブランドを買うかというようなことですね。もう1つは、いつ買うかというタイミングの意思決定です。
 具体的に成功した例でいうと、ハウス食品が主力商品であるシチューのルウのプロモーションで、タイミングの提案を07年から展開しています。シチューがよく食卓に登場するタイミングはいつかを調べたら、寒い冬だけでなく年間に6つぐらい需要の山があった。また、シチューは消費者に「母から子どもへの愛情」というイメージで浸透しており、子どもが野菜を多く摂取できるメニューという認識もあった。そこで、「野菜を摂取できるメニュー」を切り口に、6つのタイミングをつかまえて提案した。タイミングをとらえて価値訴求することで、シチューの需要を創造することができたという事例ですね。

価値を伝えるプロモーション

──ジャスト・イン・タイムでPOPを生産して店舗に配送するカルビーの「カルネコ」を、先生はどう評価していますか。

 カルネコというのは、プロモーションを非常に短いサイクルで、オンデマンドで届けるという仕組みを提供しているところがユニークですね。従来、プロモーションのツールというのはたくさん作って、お店に配布したけれど全然使われなくて、在庫になってしまうケースが非常にあったようですが、このカルネコの仕組みは、そこを効率化しているんですね。
 それだけでなくカルネコは、消費者を組織化して、実施したプロモーションをどのように評価したかをメールやハガキで答えるモニター制度を持っている。私が特に評価するのは、そのモニター制度です。
 どうしても店頭プロモーションは価格訴求型一辺倒というところがある。価値訴求に変わっていく必要があるということは、どのメーカーも思っていることですが、セルフサービスがほとんどの売り場で、うまく価値を伝えるのは非常に難しいことです。お客さんも店舗で長居をして、じっくりと考えているわけではない。そういう中で、お客さんにピンポイントで訴求できるようなメッセージや演出、陳列をどうすればいいかというのはプロモーションの課題でした。それを消費者から評価してもらうことで、どういうプロモーションが本当にお客さんの心に響いているのかきちんと知ることができる。カルネコは、そのための方法を提供していると思いますね。
 プロモーションの質的な評価もそうですが、評価する仕組みを持つということが、これからのプロモーションには重要なことだと思っています。

制度型プロモーションの問題点

── 先生は、プロモーションの継続的展開の重要性も指摘されていますね。

 プロモーションは、単発型から継続的積み重ね型になるべきだと思っています。
 マーケティングの大きな流れと関連しているのですが、従来は顧客をいかに増やしていくかが大きな目的としてあったわけですけれども、今は人口が減って総需要は増えないし、多くの市場が成熟化している。そのため、新たに顧客を獲得するよりも、リピート需要を獲得していくことが重視されてきているということです。それがプロモーションにも役割として課されてきたと思うんですね。
 それが最近、制度型プロモーションが注目されている理由にもなっています。小売業でもポイントカードなどのフリークエント・ショッパーズ・プログラム(FSP:FrequentShoppers Program)を導入する店舗が多くなっています。顧客の購買データや行動データを蓄積して、そのデータを基にして顧客に個別にアプローチしていく。そういうことが技術的にも可能になってきています。

──ただ、日本の小売業は利益率が低いため、ポイント制度のようなFSPは本来向いていないという指摘もありますね。

 FSPは、もともとは航空業界のマイレージプログラムから始まったものです。航空業界というのは、空いている座席を次の日まで取っておくことはできないので、それを提供してもほとんどコストはかからない。だから、それをマイルの報奨として提供しやすいわけですが、小売業はそういうコスト構造を持ってませんから利益率に直接響いてしまいます。だから、利益率の低い日本の小売には本来はそれは向いていないわけです。
 ですから、小売業がFSPを導入するとしたら、本当は価格訴求型のプロモーションの代替手段として位置づけることが重要なんですね。小売業が購入ポイントなどで報奨を与えているのは、コスト構造としては値引きと同じことです。ところが、多くの小売業は相変わらず値引きを行い、それに加えてポイントサービスもやっているから、経費を圧迫するばかりなんですね。

ポイント制は値引きの4倍の効果

──ポイント制度のメリットはあまりない?

 やり方次第でしょうね。今のポイント制度の主流は「バスケットポイント」と言って、総額に対してポイントを与えるやり方です。もう1つ、特定の商品の購入者に対してポイントを提供する「商品ポイント」という方法があります。一部の小売では、そういうやり方を採っていますね。
 最近、商品ポイントの効果を検証しているのですが、興味深い結果が出ています。例えば、1ポイント1円とすると、10ポイントは10円の値引きと同じです。同じ10ポイントと10円で、ポイントの提供と値引きの効果、どちらが売り上げの押し上げ効果があるかというと、ポイントの方が約4倍高いのです。商品によってバラつきはありますが、これは食品と雑貨約100商品を分析した平均です。

──どうして、そういうことが起こるのでしょうか。

 経済合理性で考えればそんなことあり得ないのですけれども、心理的な効果が相当大きいと思います。
 1つは、ポイント制は貯める喜びがあることです。一方、値引きはお金が貯まるわけではありません。日本人は貯金が好きだとよく言われますが、そういう心理が働いているかもしれません。
 それから、貯まったポイントで何を買うかというと、主婦の場合は自分のものを買うとか、ポイントがへそくりみたいな感じになっていることもありますね。
 また、「10ポイント」は1%の還元率のバスケットポイント方式では1000円分の買い物に相当します。そうすると、実際には10円分しかないけれども、あたかも獲得する価値は1000円分の買い物の価値がある、そういう心理的効果が発生すると思うんですね。
 ポイント制度は、使い方によってですが、値引きに代わる効果をもつ店頭での販促手段になり得ると思います。

顧客を育てる組織作り

──ポイント制などの制度型プロモーションは、顧客の維持・育成という面も持っていますね。

 これまでは顧客獲得がプロモーションの役割でしたが、これからは顧客ロイヤルティーの強化もプロモーションの大きな役割になってくると思いますね。
 顧客育成型の成功例としては、ネスレの「トゥギャザー・ネスレ」という会員組織があります。会員数は170万世帯(2007年8月末現在)を超え、トゥギャザー・ネスレ専用のコールセンターを設置して消費者の声を活かす仕組みを構築するとともに、会報誌「Together Nestlé」(年3回発刊)の送付や会員限定のポイントプログラムなどを実践しています。
 元々は、「ネスカフェ つづく幸せプレゼント」という商品に付いているポイントマークを送ると、抽選で花の鉢植えを12か月、毎月届けられるという非常に好評だったキャンペーンから生まれた組織です。抽選に外れても、それに何回も申し込んでくれる人がいる。その人たちを母体に組織化したものです。
 コーヒーは非常に嗜好性の高い商品ですので、ヘビーユーザーが売り上げに貢献する度合いが非常に高いんですね。ヘビーユーザーをがっちり捕まえることが、顧客の維持、育成につながってくるわけです。そういう顧客会員組織を作って、ネスレのファンを育てている。非常に成功している例ですね。

コラボレーティブCRMへ

──流通では、そうした例はあるのですか。

 流通の場合は先ほど言ったポイント制などのFSPで会員化を図っているのが主でしょうね。
 ネスレのような場合は別として、メーカーは顧客との接点をあまり持ってないわけです。しかし、FSPを小売がやり始めたことによって、それを軸にして、メーカーと小売のコラボレーションをやっていこうという動きが少しずつ出てきています。「コラボレーティブCRM」と呼ばれていますが、小売とメーカーのコラボレーションによって顧客との長期的な関係を築いていこうというところが登場しています。
 代表的な例に、山梨県に食品・住居関連品・衣料品を取り扱うスーパー「オギノ」があります。オギノは96年からFSPに取り組んでいました。山梨県の総世帯数は31万世帯ですが、そこで40万枚強の「オギノグリーンスタンプカード」が発行されています。世帯数以上に普及しているんですね。
 そのFSPのデータを利用して、オギノはメーカーと一緒に特定の消費者に対するプロモーションをいろいろな形でやっています。例えば、新しい酒が出てくると、酒のヘビーユーザーだけをデータから拾い上げて、DMを送ったり、サンプルを送ったりというようなことをやっている。一般的にDMのヒット率は非常に低いわけですが、顧客データを元にターゲットを絞り込むことによって非常に高いヒット率を獲得している。メーカーと流通が組んでプロモーションを行うのも、今後の1つの方向性だと思います。
 ただ、大小含めいろいろな小売業がある中で、メーカーが個別に対応していくのは、なかなか難しいところがあると思います。そこをとりまとめるハブになるようなビジネスが、今後出てくる可能性もあると思いますね。

これからの折込広告の役割

──最近のプロモーションの課題と役割の変化についてお聞きしてきましたが、その中で折込広告の役割も変わってくるとお考えですか。

 折込広告の使い方が、より精緻になってくるのではないでしょうか。
 やはり今は、FSPなどで顧客の購買履歴がわかるということを利用して、それをどう売り上げに結びつけていくかという方向にマーケティング手法が向かっています。アマゾンのようなネットの小売業も然り、ネットスーパーにもいろいろなところが力を入れ出しています。
 ただ実店舗の場合、商圏という概念はずっと残るでしょうから、その商圏に到達する手段として折込広告は今後も有効な手段として残ると思います。そういう意味では、折込広告の役割は変わりません。しかし、今後はそれに顧客データが加味されていく。最近はFSPを導入している小売が非常に増えていますから、このデータと折込広告を連動させることが増えてくると思いますね。
 これまでも折込広告を入れれば、客数がどれだけ増えたのか、どの商品がどれだけ売れたのかはわかりました。しかし、FSPが導入されていなかった時は、そのお客さんがどこから来たのか、どういう人が来たのかまではわかりませんでした。FSPのデータと連動することによって、どういう配布の仕方をした場合にお客さんが増えるのか、どこから増えているのか、というようなことが評価できるようになります。また、そうすることによって折込広告の使い方、評価の仕方が従来とは変わってくると思いますね。
 逆にいうと、どういう配布をした場合に、どこの地域からお客さんを引っ張ってくることができるのか、あるいは、ターゲットとする地域から引っ張ってくるためにはどういう商品を折込広告に載せれば効果的なのかを検証できるツールにFSPがなるということです。

──FSPの活用が進んでいくと、最終的には顧客に個別に対応していくという形になるのでしょうか。その場合も折込広告には、マス的な効果というか、消費者の知らないことを知らせる効果は残ると思うのですが。

 個別対応というより、セグメンテーションという方向に向かうでしょうね。イギリスのテスコというスーパーはFSPの仕組みを導入して非常に成功しています。四半期に1回、会報を発行しているのですが、顧客を購買の仕方でセグメンテーションして、会報の中身やクーポンの中身を変えるといったようなことをしているんですね。
 折込広告を配布する場合に、購買履歴によるセグメンテーションは難しいでしょうが、地域セグメントはできる。折込広告にバリエーションを持たせる方向に今後は進むと思いますね。

小売とメーカーの新しい関係

──小売とメーカーがハッピーになるプロモーションは可能でしょうか。コラボレーティブCRMにその可能性を感じますが。

 今回のテーマと離れるかもしれませんが、メーカーから流通業者に向けて行われるトレードプロモーションの改革というか、取引制度をどうするかという問題は依然としてありますね。メーカーと卸を含めた流通間で取引にまつわるいろいろなお金の動きがあるわけです。それは店頭段階の販売促進と密接に結びついています。
 例えば、値引きの原資がリベートであったり販売促進費であったりと、まだ非常に複雑な取引制度になっているところが多いと思うのです。日本のメーカーのリベートの実態は、流通業に対する利益補填であり、セールスプロモーションとしては位置づけにくい性質のものです。メーカー側からすれば、流通業に非常に巨額な販促費を取られているという意識が強いと思うのです。
 「これからはコラボレーティブCRMだ」と言っても、またそこで販促費がかかるということになると、なかなかスムースに回っていかない。メーカーから流通業に払われている販売促進費やリベートの仕組みも、新しいやりかたに合うような方向に変わってこないと、なかなかメーカーと小売双方がハッピーになるような販売促進を実現していくのは難しいと思いますね。

──具体的な解決策はあるのでしょうか。

 非常に難しい問題ですね。ただ、現代では多くの商品領域において、毎年高い売り上げ成長を果たすことが難しくなっています。そうなると、売り上げを伸ばすことで非効率な部分をカバーするということはできません。メーカーから小売にいたる流通全体の効率化が、重要です。
 こうしたことを考えると、今後は流通業への押し込みによる売り上げ向上が、メーカーの販売促進の目的にはなり得なくなることは明らかです。メーカーの販売促進はすなわち消費者の購入促進です。トレード・プロモーションも最終的には消費者への販売促進に結びつかなければなりません。そう考えると、取引制度のあり方も、今後大きく変わってくると思います。
 実際、そういう中でも、「オギノ」のようにメーカーと一緒になってCRMに取り組んでいるところはありますし、「コープさっぽろ」のように、マーチャンダイジングの研究会を作ってPOSデータを開示し、卸やメーカーからさまざまなプロモーションの提案を募っている小売もたくさん出てきてます。
 売り場のデータは小売が持っているわけですが、それは小売も含めた流通業とメーカー共通の財産だと思うんですね。商品あっての店頭ですから、小売業だけではそのデータを本当にうまく活用することはなかなかできません。今後はそのデータを材料にして新しいプロモーションの手法を考え、またその結果を評価するという方向に進んでいくべきだと思います。
記事作成:2008 Apr i l

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