進化を続ける自治体アンテナショップ

2017.07.21

一般財団法人 地域活性化センター 広報室長 兼 副編集長 畠田 千鶴 氏

一般財団法人 地域活性化センター 広報室長 兼 副編集長 畠田 千鶴 氏

81年法政大学経営学部卒。10年早稲田大学大学院公共経営研究科修了。85年から地域活性化センター。11年から月刊情報誌「地域づくり」の編集を担当、現在は副編集長、15年に新設の広報室の室長。 「自治体アンテナショップ実態調査」などを担当。
(所属・役職等は取材時点のものとなります。)

 東京に居ながら地方のグルメやお土産物に触れ合えるアンテナショップは、年々その数を増やしている。「北海道どさんこプラザ」や沖縄の「銀座わしたショップ」など年間7億円以上売り上げるアンテナショップもある。「自治体アンテナショップ実態調査」を手がけ、月刊「地域づくり」の副編集長も務める地域活性化センターの畠田千鶴氏に、自治体アンテナショップの最新事情を聞く。

── 自治体アンテナショップの現状からお聞かせください。

 まず、最近出たばかりの英文自治体アンテナショップのパンフレットについてお話しします。都内にある店舗がお金を出し合って、地域活性化センターがまとめ役になって制作したものです。東京に来た海外の人たちにもPRしようということで英語版も作りました。各店舗の説明にはQRコードが付いていて、読み込むと、ぐるなびと東京メトロが共同運営している「レッツエンジョイ東京」のサイトに飛び、使っている端末によって、英語、中国語簡体字・繁体字、ハングルのページが自動的に表示されるようになっています。

── 地域活性化センターが自治体アンテナショップの支援を行っているということですか。

 地域活性化センターは総務省の関係団体で、全国の都道府県、市町村はすべて会員です。「自治体アンテナショップの支援」も会員サービスの一環として行っていて、「自治体アンテナショップ実態調査」や、アンテナショップ関係者向けのセミナー、自治体アンテナショップ情報交換会も年2回開催しています。新たに自治体アンテナショップの英文パンフレットを作成する場合、民間企業が自治体に呼びかけるのが難しいこともあり、地域活性化センターがまとめ役になったということなんです。

自治体アンテナショップのパンフレット。日本語版は民間、英文版は地域活性化センターが制作した。「Antenna shop」では「アンテナを売る店」の意味になってしまうため、英語版では「Local specialty shops」とした。

自治体アンテナショップが銀座・有楽町に集中する理由

──「自治体アンテナショップ実態調査」を始めた理由というのは?

 自治体アンテナショップは、もともと各自治体が独自に始めたものです。アンテナショップが銀座、有楽町にでき始めたのは90年代からですが、その頃、有楽町電気ビルの1階に地域活性化センターの運営する「ふるさと情報プラザ」があり、それでマスコミや出店を考えている自治体から問い合わせが頻繁に来るようになったのです。地域活性化センターとしてアンテナショップの全体像を把握しておく必要が出てきたことが、定期調査を始めたきっかけです。

── 自治体アンテナショップは、いつ頃からできたのでしょうか。

 90年以前からあったのが竹芝桟橋にある東京都諸島の物産販売所です。地方のアンテナショップでは94年の「銀座わしたショップ」(沖縄)、95年の有楽町の「かごしま遊楽館」が先鞭を付けたショップです。実は、東京駅の八重洲口周辺の再開発で国際観光会館や鉄道会館に入っていた地方の物産販売所の立ち退きが決まった時に、最初に出たのがこの2つです。両者の成功で、他の自治体も銀座周辺に集まって来たのです。

── それで銀座や有楽町に自治体アンテナショップが多いんですね。

 定期調査(13年度)では都内に52店舗(図1)、直近の調査(15年8月)では57店舗ありますが、そのうち銀座・有楽町界隈に20店舗、新橋、日本橋を含めると半分以上がこのエリアに集中しています(図2)。狭いエリアに集積したことが、結果的に自治体アンテナショップの認知や集客に非常にプラスになったと思います。

多店舗展開、2県共同、コンビニ出店など多様化する出店形態

── 自治体アンテナショップの売上はどのくらいあるのでしょうか。

 03年度には1億円以上売り上げる店舗が50%以上になっています。床面積の増加や飲食スペースが増えたことが理由です。12年に銀座1丁目にオープンした「広島ブランドショップTAU」は、地下は本格的な日本料理、1階はイートイン、2階はお好み焼き、3階が瀬戸内の江田島の食材を活かしたイタリアンで、広島の食材や料理を様々な形で提供しています。しかも3階はイベントスペースも兼ねています。自治体アンテナショップは進化してきていますね。

銀座1丁目にある「広島ブランドショップTAU」は、今、勢いのあるアンテナショップのひとつ。「TAU」は「届く」という広島の方言。ビルの4フロアを占め、各階に飲食スペースがある。広島カープのパブリックビューイングやカープ女子会も開催されている。

── 自治体アンテナショップの目的は特産品のPRが多いのでしょうか。

 「特産品のPR」「自治体のPR」「観光案内・誘致」が設立目的の上位3つです。実は、「自治体アンテナショップ実態調査」では、設立目的とほぼ同じ項目で実際の「運営効果」を聞いています。「観光案内・誘致」目的は84.6%と多いのに、実際の「運営効果」は53.8%と少ない。旅費が高いことも要因だと思いますが、このへんが今後の課題だと思います。反対に「市場調査・消費者ニーズ(の把握)」は、設立目的50.0%に対し、実際の運営効果は61.5%と高く、商品開発や地場産品の強化には役立っていることがわかります(図3)。

── 自治体アンテナショップの最近の動きがあったら教えてください。

 「北海道どさんこプラザ」と「銀座わしたショップ」は単館で来場者が年間100万人、売上が7億円を超えています。こうした所を中心に多店舗展開するところが出てきています。
 また、14年に「とっとり・おかやま新橋館」がオープンしました。2県共同出店は03年の「せとうち旬彩館」(香川県・愛媛県)に次いで2例目です。
 それから、ローソンやファミリーマートなどコンビニの店内に「特産品コーナー」などの形で開設する例も09年頃から出てきています。
 ユニークな例では、長野県の木島平村と調布市が姉妹都市提携をしていて、03年から調布市にアンテナショップを出しています。都市と農村の交流にアンテナショップがハブ的な役割をしています。

── 特産品のPRではどうですか。

 95年にできた「かごしま遊楽館」が典型例ですね。「森伊蔵」や「魔王」など鹿児島の芋焼酎と黒豚をメジャーにしたという意味でアンテナショップの先鞭をつけたと思います。
 地域活性化センター(中央区日本橋)の1階に「おいでませ山口館」があります。3年前は、今、大人気の日本酒「獺祭」が普通に買えました。お店の人と話すと「雁木も地元では親しまれていますよ」という話をしてくれる。ただ売るのではなく、自治体が出しているショップだからこそ、安心して商品の説明やその商品にまつわる話も聞ける。それもアンテナショップの良さだと思います。
記事作成:2015 October

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