販売ツールとして活用するツイッター

2017.09.19

(株)日立コンサルティング シニアコンサルタント 小林 啓倫氏

(株)日立コンサルティング シニアコンサルタント 小林 啓倫氏

1973年生まれ。東京都出身。筑波大学大学院修了。ERPコンサルタント、外資系コンサルティング会社、ベンチャー企業を経て現職。複数のブログで、社会に向け積極的に情報提供を行う。近著に『「ツイッター」でビジネスが変わる!』(ジョエル・コム著、小林啓倫訳 ディスカヴァー・トウェンティワン刊)。
(所属・役職等は取材時点のものとなります。)

 1日のつぶやきは世界中で5,000万回にのぼるなど、ツイッターを使ったコミュニケーションは大きく伸展している。そうした中、企業によるビジネスでの活用事例も増えてきた。特に販売活動の中でツイッターはどのように使われているのか。

―― ツイッターが、企業の販促のツールとして使えるのではないかと認識されだしたのはいつぐらいからでしょう。

 早くは2007年の段階から、いくつか企業アカウントは出ていたと思います。その後、アメリカの大統領選でオバマ陣営が活用し、その効果が喧伝されたこと。あるいは、ニューヨークのハドソン川に飛行機が不時着した事故の際に、ちょうどアイフォーン(iPhone)を持っていた人が写真を撮ってツイッター経由で発信。そのツイート(ツイッターの投稿記事)が急速に広がる中で、マスメディアが後追いで情報を伝えるような展開となったこと。そうした事例を見てから、企業も、これを有効に利用すれば人々の間に情報が素早くいきわたるだろうと考え出した。このあたりがツイッターのブレークのきっかけとして、よく挙げられますね。

ツイッター活用の具体事例

―― ツイッターの企業活用事例では、購買を促すビジネス直結の情報提供タイプ。もう1つは、顧客とのコミュニケーションを重視するタイプに大別できるように見えますが。

 非常にざっくりと言えば、その2つの大きな流れがありますね。そこをもう少し細かくすると、私は次の4つの型に分けて見ています。まずビジネス直結のタイプでは、企業メッセージを広く届けるために使うのがブロードキャスト型で、新聞社などメディアのアカウントがその典型です。2つ目に、ダイレクトな販売情報を提供するものがセールスマン型です。例えば、タイムセール情報やディスカウント情報など、ツイッターでしか得られない情報を流すことで販売サイトへのアクセスや、実店舗への来店を促します。
 一方の、コミュニケーション重視のタイプはマスへ向けた一方的な宣伝というのではなく、顧客との直接のやりとりを目的としています。その中で、自社の人気キャラクターがつぶやくという設定でユーザーに訴求していくものがキャラクター型です。ブランドイメージをうまく利用して、交流を生みやすくしています。
 そして4つ目に、企業とユーザー双方向のやりとりを目的としたコミュニティ型があります。お互いにゆるいネタを流して一緒に楽しんだり、あるいは製品への意見をダイレクトに聞いてしまうなど、積極的に顧客に関わるためのツールとして使っている例もあります。

―― ツイッターをいち早く使い始めて成果をあげた企業といえば、まずどこが挙げられるでしょうか。

 先進的で、かつ一番有名なのはデル(Dell )の事例でしょう。デルは複数のアカウントを使い、商品情報やアウトレット情報など目的別にチャンネルを分けてアプローチをしてきました。2007年からの2年間で300万ドルの売り上げ、さらに2009年末までの累計では650万ドルの売り上げをツイッターで達成したと発表しています。デル全体で見ればそう大きくはないのでしょうが、“つぶやく”ことでこれだけの成果が上がる以上、もはや無視できない販売経路だと言えます。デルが成功しているのを見て、我々もというかたちで他社も続いてきたものと思います。

―― なぜデルのツイッター・プロモーションはうまくいったのでしょう?

 タイムセールみたいな形で、「いますぐ来ていただければ、こういうマシンがこんな値段で買えますよ」というのを、顧客、この場合はアカウントをフォローしている人々にダイレクトに伝えました。もともとデルのPCに関心があった人々がすぐに反応してサイトにアクセス、購入したというのが、一番わかりやすい流れではないかと思いますね。
 現在、デルアウトレットのフォロワーは150万人を超えています。一つのつぶやきで、一瞬にしてそれだけの人に届くということです。

―― ツイッターのプロモーションでは、どういった商品が効果を上げやすいと考えられますか?

 PCなどはスペックが具体的にわかっている商品で、とくに現物を見たり手に取らなくても価値判断ができる。そういった商品は、たとえば「この1時間だけは、前日1万円のものが8千円になります」という情報を流すことで購買に結びついていくのは、ある程度予想もできますし、かつ実際に起きていることだと思います。
 ほかに、割引にはなりませんが新刊書籍なども、評判になっているものであればネットで買うことにあまり躊躇はありません。ツイッター経由で売り上げを伸ばせる商品でしょう。

―― 企業の活用例では、デルに代表されるような、販売に直接結びつけるタイプの方が多いのですか。

 いえ、実際にはコミュニケーション型の活用も多くて、日本ではカトキチ(テーブルマーク)やフジヤカメラなどは、つぶやきをネタとしてお互いに楽しむようなタイムラインを展開しています。デルも、決して「これが安いよ! 」的なツイートばかりを出しているわけではなく、直接売り上げには結びつかないゆるいメッセージも数多く投稿しています。
 お得意様である人々に対して、価格以上の情報を伝える。それは人と人の温かさみたいなものかもしれないし、あるいは単純にネタだったりもする。販売のチャンネルというだけではない、お客様との関係を強めるツールとしても役立っている。そういう意味では、ブランディング的な使い方もできるツールだと考えています。

―― コミュニケーション型の範疇かもしれませんが、ミニヘルプデスク的な使い方もされているようですね。

 「これ、不満なんだけど」といった自社へのつぶやきに、「すみませんでした」とか「こういうことをすれば直ります」という返信を返す。そんなオンラインのヘルプデスクとして、あるいは顧客対応手段としての使い方も実際に伸びているところです。
 ジェットブルー(JetBlue)という飛行機会社の例が有名で、「機内サービスが悪い」「カウンターですごく待たされている」というツイートがあれば、それを見つけて、「申し訳ありません」とつぶやき返したり、あるいは「何分後に担当者が到着します」といった具体策を返信し、顧客の不満や要求にリアルタイムで対応しようとしています。こうした例では、当然、専属の担当者がいて、ツイッターやほかのソーシャル・ネットワーキング・サービス(=SNS。ミクシィやブログなど)上で、自社製品やサービスに対するユーザーのコメントを常にモニターして、拾い上げています。

――ユーザー側は自分のツイッターにつぶやけば、自動的に相手が見つけてくれるというわけですね。

 ただ、本人としては相手先に伝わることを意図せずつぶやいたのに、いきなり「すみませんでした」と返ってくれば、自分の発言を監視されているように感じる人がいるのも事実で、気持ち悪がられるというリスクはあります。この「気持ち悪い」という反応は、とくに日本人の場合は強いんじゃないでしょうか。ですから、どういうレベルまで反応していくかは、よく考えて対応したほうがいいとは思いますね。

――いずれにせよ、ツイッターは生の声を拾うことができる。

 ええ、ツイッターは会話という側面が強いので、それを活かしたマーケティングリサーチ的な使い方もできます。つぶやきを逐次チェックをして、反応を返さないまでも、その内容を次回の製品改善に役立てる、あるいはサービスの改善に役立てるとか、顧客に何かを買ってもらうというだけではなくて、フィードバックをもらうというところにも、企業活動としてのツイッターの活用法があるのではないかと思いますね。

モバイルとの相性の良さが特徴

――マーケティングツールとして見た場合、ツイッターの特徴はどのような点にありますか。

 まず、モバイルと非常に相性がいいツールだということです。携帯電話、特にスマートフォン用のツイッター・クライアントソフトが充実していることで、メールを見るのと同じ感覚でモバイル端末を開き、自分でも「いまなにしてる」とつぶやく行動が普及してきたところがあります。ですから、ツイッターのユーザーは、お得な情報をチェックするために常にパソコンの前に貼りついているというイメージではなく、隙間時間で利用している。さらに140文字が限度のつぶやきは、簡単に読んだり、入力できるということで、非常に生活と密接しやすいソフトだと感じています。そのため、タイムセールの情報を流しても、ブログやSNSより気づいてもらいやすかったり、情報が非常にスピーディーに広がるといった特性が出てくるのですね。

―― 例えば主婦も、ツイッターでお買い得商品を探すようになるでしょうか?

 ツイッターの情報は、現状ではまだ一般の主婦にはなかなか伝わっていかないでしょう。折込広告に「ツイッター、始めました」という説明を付けるなど、いま使われている情報経路も併せて使っていかないと、ツイッター一本で、というのは難しいと思います。もっとも、今後、ツイッターがあれば他のすべての宣伝メディアがなくなるかというと、やはりそうではない。ブログで詳しく商品説明をしてそこから実店舗に誘導していくとか、折込広告からツイッターを見てもらうとか、それぞれのメディアの特性を生かして、切り分けて、トータルに考えていくことは当然、必要になっていくと思っています。

――ツイッター・ユーザーについて、もう少し教えてください。

 ツイッターの利用者像について興味深い事例があります。今年に入って、「フォロワー1人につき1円をおまけします」というキャンペーンを、高円寺のおもちゃ屋さんが行いました。例えば、5000人のフォロワーがいれば5000円の割引が受けられる。1000円、2000円のボードゲームなら無料で持ち帰れてしまうわけです。これは店側にとって、かなりリスキーなキャンペーンに見えますね。
 実際、来店したツイッターユーザーの中にはかなり多数のフォロワーを持っている人もいて、欲しい商品の多くは割引額だけで買えてしまう状況でした。しかし、それでは店に悪いというモラルのようなものが働いて、1個は無料で手に入れても他は代金を払って買った、という人がたくさんいたそうです。
 フォロワーが多い人は情報発信力が高く、ある程度理性的な考え方をする。それをフォローする人も同質に近いととらえれば、いまツイッターを利用している割と多くは、“品の良い人たち”と言えるかもしれません。

――マーケティングツールとしては、比較的筋のいいものになる可能性がある?

 そうなる可能性はありますが、従来のツールとは異なる部分を意識しておかないと、間違った方向に進んでしまうことはあり得ます。前述のように、ツイッターはモバイルで使われることで生活に密接につながっており、かなりプライベートな空間に行きやすいツールだと言えます。そこへ、突然土足で踏み込むような形で企業が宣伝をしたら、やはり敬遠されてしまう。広告ばかり流しているだけのアカウントは、スパっと切られてしまいがちですね。
 もし広告的なつぶやきを中に折り込むのであれば、まず良好なコミュニケーションを成立させることが前提ですね。その中で、一つ二つ、「今日は新製品をお知らせします」とかセール情報などを入れていくと、それは受け入れられやすくなると思うんですね。
 こうしたアプローチの中には、前述のキャラクター型などが活用されています。日本テレビはダベアが、TBSではブーブーがたわいもないつぶやきをしつつ、番組の見所などをさらっと紹介します。キャラクターから発せられると、あまり宣伝臭く感じない。キャラクターという既に認知された資産がうまく活用されています。

つぶやく人の個性が重要に

――モバイルとの親和性というほかに、ツイッターコミュニケーションでの大きな特徴はありますか。

 「自分はこういう人間です」というのを明確に出したアカウントのほうが、フォロワーを引きつけやすいという点があります。ソーシャルメディアというのは、基本的に個人の魅力が価値になる世界なんですね。たとえば業界の動向をくまなく教えてくれたり、「こういう記事が出たので、皆さん、読んだほうがいいですよ」など、情報案内人のような立場で情報発信してくれる人のところにフォロワーは集まってきます。
 これは企業アカウントでも同じです。自社製品の情報をつぶやくのに、プレスリリースのような客観に徹した書き方はあまり馴染みません。逆に主観100%へ近づくほど、ツイートとしてはおもしろくなる。広報の人がつぶやくのだとしても、「会社の人」という立場にこだわりすぎずに一個人として発言していくことで、いろいろな消費者から受け入れてもらいやすくなる。そういう個人的なつぶやきはやはり読んでいておもしろいので、フォローしようと思うんです。主観でつぶやくには、もちろん成功も失敗もあるとは思いますが、反応を見ながらいろいろ改善していけば良いでしょう。

―― 会社の製品・サービスについて個人的な発言をするには、現状、やはりハードルもあるのでは?

 ツイッターだけ、あるいはソーシャルメディアだけ好きにやって良いというのではなく、ユーザーと自由にコミュニケーションすることが企業全体で許容されていないと難しいでしょうね。そのいい例がザッポスという靴の通販会社です。
 同社は全社員にツイッターを許可しており、自由に書き込んで良いとしています。そうすると、社員はおもしろいことを書き込むので、彼らそれぞれが少なからぬフォロワーを確保しているそうです。ツイッターだけでなくコールセンターでも、ザッポスの靴にまるで関係ないこと、たとえば「寂しいので話し相手になって」とか、「近くにおいしいピザ屋がないか」といったコールにも、お客様の問い合わせとして真摯に対応するのだそうです。それをよしとする企業カルチャーを持つ会社なので、ツイッターでも「私的な会話OK」にできるんだと思います。
 そういう意味では、大企業より小規模会社ほど自由にできる環境が整っているでしょうから、ツイッター担当者のキャラクター、店であれば売り場に立つ店員のキャラクターなどは、前面に出しやすいでしょう。

――たとえば書店の公式アカウントで、書店員が店頭POPを書くようにつぶやいてみる、といったことでしょうか。

 ある分野に非常に詳しくて良い書評を書ける人、あるいは引きつけるPOP作りがうまい人がいるなら、その人の個性で本を紹介するというやり方はありますね。日本語で140字は、けっこう書き込めます。そのつぶやきから見える個人の魅力、深い知識、ネタのおもしろさなどがきっかけとなって、いわばカリスマ的にフォロワーを増やしていかれる。その人を通じて行われる宣伝の力は、やはり大きいと思いますね。

――今年に入ってから、日本でもツイッターでキャンペーンを仕掛ける例が増えてきましたね。

 景品をプレゼントして「はい、さよなら」という形式ではなく、フォローする参加者が一緒になって楽しめる、楽しみながら例えば知識を得られるなど、参加者のメリットを考えて仕掛けるキャンペーンなどがうまくいっているようです。
 ただ、重要なのはキャンペーン効果の継続をどう考えるかですね。キャンペーンをやって盛り上がりました、フォロワーが増えました、知名度も上がりました、ではその後どうする?となったときに、やはりツイッターで日々のつぶやきを地道に重ねていくことが一番重要だと思います。
 ツイッターはベースが情報の提供にあるわけで、人々が欲しいと思う情報をいかに継続して出していくかに注力しないと、キャンペーンを打っても単発でポンポンと終わってしまいます。

――キャンペーンで一気にフォロワーが増えれば成功、というものではない?

 情報を伝えるだけなら、フォロワーを増やすこと自体は必須条件ではないと思っています。いまツイッターにはいろいろな情報の流入経路があって、たとえばRT(リツイート)や#(ハッシュタグ)もその1つですし、検索やリスト機能というのもあります。あるいは、いまツイッター上で大きく話題になっていることや、多くの人に支持されたツイートを表示するウェブサイトもあり、いろいろな方法でつぶやきが得られます。ですから、フォロワー数があまり多くなかったとしても、それは必ずしも、情報が飛ばないということではありません。実際、タイムセールの情報などは、けっこうRTで飛ばされています。良い情報さえ発信していれば、その到達力はツイッターという仕組みの中で高まっていくのですね。
2010 April

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